学部学科トピックス
【研究者紹介】「快適な暮らしと地球環境の保全を両立させる」廣谷純子 講師
本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は廣谷純子 講師です。
家政学部 生活環境学科 廣谷純子 講師
◆専門分野
住環境デザイン
◆研究テーマ
持続可能な社会を実現するための住環境デザイン
・環境建築、パッシブデザイン
・住まい方支援、住環境教育
Q 研究内容について教えてください
現在、地球上のあらゆる場面で、持続可能な社会の実現が求められ、「住宅・建築」では、「快適性」を確保しつつ「省エネルギー性」を実現するような住宅の普及促進が図られています。私の研究対象である、環境建築やパッシブデザインといった考え方は、適切な断熱や日射遮蔽等の工夫を施し、太陽の暖かさや明るさ、自然の風、樹木など身近な自然のポテンシャルを生かすことで「快適性」と「省エネルギー性」を両立させる設計手法のひとつです。 加えて、環境建築の住まい手が、夏に窓を開けて通風で涼をとりつつ、室内で起こる熱中症を予防するために冷房設備を適切に使用するには、環境建築の性能を生かした住まい方をアドバイスすることも不可欠です。つまり、環境建築の普及促進には、設計手法だけでなく、住まい方支援や住環境教育のようなソフト面からのアプローチも必要と言えます。 そのようなことから、持続可能な社会を実現するための住環境デザインの研究として、環境建築やパッシブデザインといった技術面と、住まい方支援や住環境教育といったソフト面の2方向から研究に取り組んでいます。
Q その研究を始めたきっかけを教えてください
学生時代に恩師(宿谷昌則先生 東京都市大学名誉教授)の研究に触れ、自分が心地よいと感じる環境は、電力等のエネルギーをたくさん使い、人工的にコントロールされたものではなく、自然の風や光、太陽の暖かさで形成された環境(共生型)建築であることに気付きました。そして、そのような建築は、住まい手にとっては健康的で光熱費のかからない住まいになり、さらに地球環境を持続可能なものにすることにつながる!こんなに一石二鳥の技術があるのだ!と感動し、このような建築の普及に繋がることを仕事にしたいと思ったことがきっかけです。
Q その研究が『未来にどう生かされてほしいか』教えてください
研究を通じて、化石燃料等に依存するのではなく、太陽の暖かさや自然の風など身近な環境のポテンシャルを生かす住まいや住まい方を普及させることが目標です。 研究テーマである環境建築やパッシブデザインは、地域の気候特性や生活スタイルを生かす建築でもあります。環境建築やパッシブデザインの普及によって、伝統的な生活文化の継承、さらに庭や地域の樹木の価値再考などにも貢献できるのではないかと考えています。また、住環境教育や住まい方支援の研究は、地域貢献活動として取り組むことで、電力等のエネルギーの使用量を減らすライフスタイルが、辛いことや我慢することではなく、適切な技術と知恵を使うことで、快適性と両立した方法で実現できることを知ってもらう機会にもなります。 太陽の暖かさや自然の風など身近な環境のポテンシャルを生かす住まいや住まい方を普及させることで、今のこの地球環境を、未来の子どもたちに残したいと思っています。
◆高校生へメッセージをお願いします
多くの人は、24時間のうちの8割以上を建物の中で過ごしているのではないでしょうか。人生80年とすると、60年前後を建物の中で過ごすことになります。私たちのとって一番身近な環境は、実は建築・住環境です。そこに興味をもつこと、面白がることは(ちょっと大げさですが)人生を豊かにすると思っています。未来の地球と自分の人生、どちらにも関係するやりがいのある研究テーマではないでしょうか。
プロフィール
家政学部 生活環境学科 廣谷 純子 講師
女性として手に職をつけ、働き続けることを意識して建築士への道を志しましたが、在学中から環境に負荷をかけ続ける従来型の建築スタイルには違和感を感じてきました。そこで卒業後は意匠設計事務所で環境建築を創る仕事に携わりました。2つ目の職場では、「学校エコ改修と環境教育事業」という環境省のプロジェクトに携わり、全国のモデル校(小・中学校)の教師や生徒に、エコ改修された校舎の仕組みを理解して、適切に使ってもらうことを目的とした、住環境教育の推進業務を担当しました。
このプロジェクトに関わる中で、一般の人は環境建築についてよく知らないことに気づき、専門家が一生懸命環境建築を作るだけでは社会を変えることはできないと強く思いました。環境建築に施された仕組みや、そこでの住まい方を伝え、環境に配慮した住まいと暮らしの魅力を伝えていくことも重要だと思うようになり、それを研究テーマにしようと一念発起して、5年ほど前に博士コースに進学し、博士を取得後、2022年4月から研究者となりました。
これまでの経歴・経験から、環境建築を「つくる視点」と「つかう視点」の2つが合わさったところを研究テーマとして取り組んでいるところが、自分の独自性でもあると思っています。