学部学科トピックス

2025.02.13
生活環境学科

【研究者紹介】「まちづくりファシリテーター養成講座の開発と
実践による参加のデザイン、建築・まちづくりの啓蒙と普及」
松村 哲志 講師

本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているのかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は松村哲志講師です。

 

生活環境学部 生活環境学科 松村 哲志 講師

専門分野
建築設計・まちづくり・建築設計方法・建築設計教育・実践的知識の形成方法

◆研究テーマ
まちづくりファシリテーター養成講座の開発と
実践による参加のデザイン、
建築・まちづくりの啓蒙と普及



【動画】

Q 研究内容について教えてください

この研究は、まちの主役である住民・市民と行政、専門家をつなぐ建築まちづくり人材である「まちづくりファシリテーター」の育成とその実践を通じて、参加のデザイン、建築まちづくりの啓蒙と普及を行うものです。
建築・まちづくりに関連した幅広い分野から実践者、研究者、教育者などが集まり分野をつないでいくように開発・実践を行いました。
2019年からは全国各地域に根ざした高等教育機関と協働して教育活動を実践し、協働を促すまちづくり人材を輩出しました。特にwebやオンライン、オンデマンドなどの手法を積極的に取り入れ、「距離」「時間」「人」の隔たりを超えて、「つなぐ」ことを意識した学びを行うことで、学生の教育にとどまらず、社会人の学びなおしやカイロでの保存まちづくり活動への貢献など、さまざまな広がりを見せています。
2021年から2年間、文化庁国際交流事業としてカイロ旧市街においてこの取り組みを元にして住民・市民と協働するファシリテーター講座を実施。日本で育まれたこの取り組みは世界へと広がりをみせています。

 

Q その研究を始めたきっかけを教えてください

大学時代、恩師の研究の関係からコーポラティブハウジングという集合住宅の秋祭りをお手伝いしました。
秋祭りが終わった後、住民の運営スタッフとの打ち上げにお邪魔した際、話の流れで予定になかったお宅訪問が始まりました。突然の出来事なのに皆さん自分の家が大好きで、自慢しながら、謙遜しながらも建築を学ぶ学生に見せてくれました。
一般的なマンションや集合住宅は先に建物を建設し、既に完成した建物について住む人が選ぶのに対し、コーポラティブハウジングでは先に住む人を募り、組合を作り、居住者と建築家が協働してその人にあった住まいづくりを一緒に行います。
住む人が皆で一緒につくるためにその人たちにあった住まいができるとともに、住む前からコミュニティが育まれ、住処に誇りと愛着を持ちます。私はコーポラティブハウジングに関する研究をテーマに大学院にて研究に取り組みました。
まちは愛着がある場所でなければいけません。そのためには住民市民こそまちづくりに参加すべきである。その思いもあり、参加のデザイン、建築まちづくりを行う人材の育成を行なっています。

 

Q その研究が社会にどう貢献されているのか、 または人々の生活にどうつながるのかを教えてください

現在、地域における問題・課題として「空き家・空き地」「防災」「地域活性化」「福祉の充実」「人口減少」「担い手不足」などがあります。
それらを総合的に解決、推進するためには、地域創生を含めたまちづくり活動が大切であり、住民・市民と行政、専門家をつなぎ、協働してまちづくりを推進する人材(まちづくりファシリテーター)の育成が、現在の「まち」における諸問題を解決し、自らのまちを自らが作っていくという創造的な意味で重要です。
その観点から参加のデザイン建築、まちづくりの人材育成を行うことで地域の問題解決に結びつき、地域創生、ひいては持続可能な社会の実現につながっていくと考えています。
2023年秋には常滑市、日本建築家協会、JCAABEと協働してまちづくりワークショップを開催し、住民と専門家と協働してまちの資源を生かし、課題を解決する提案を作成して行政に贈呈し、今後のまちづくりの一歩となる活動を行うなど、地域での実践に向けて歩みだしています。
これらの活動が評価され2024年には日本建築学会教育賞(教育貢献)と工学教育賞をダブル受賞。この活動の成果が他の高等教育機関へと広がりを見せています。

 

◆高校生へメッセージをお願いします

協働して何かを作り上げていくことは大きなやりがいと充実した楽しさが得られます。
楽しんで学び、それが仕事になっていく。そして地域や社会の役に立っていく。なんだか良いですよね!
そんな道を見つけるためには何よりも自分が楽しむこと、自分が良いと思うことを見つけること。リアルに体験することが大切です。
学校の勉強だけでなく、いい意味での経験をして自分にとっての楽しさを見つけてください!

 

プロフィール
生活環境学部 生活環境学科 松村 哲志 講師
修士(工学)、一級建築士、JIA登録建築家、JCAABE認定まちづくり適正建築士
1997年日本大学生産工学研究科 博士課程前期 修了
2021年名古屋大学教育発達科学研究科博士後期課程単位取得満期退学
建築家として建築設計まちづくり活動に従事。
2023年より名古屋女子大学家政学部生活環境学科講師として建築設計・まちづくりゼミにて設計教育を行っている。
1996年 東京建築士会住宅設計競技 佳作
2012年 JIA建築家のあかりコンペ 最優秀賞受賞 など設計作品において受賞多数
2022年 日本建築学会教育賞(教育貢献)
 「JIA東京都学生卒業設計コンクールの実施とアーカイブ化」
2024年 2023年度工学教育協会 工学教育賞
2024年 日本建築学会教育賞(教育貢献)
 「JCAABE まちづくりファシリテーター養成講座の開発と実践」