「どう考えるか」が
看護の質の向上に
つながる
ー研究者紹介ー
看護学科 嶋﨑 和代 准教授
専門分野
基礎看護学
研究テーマ
看護教育、看護管理、人材育成
Q. 研究内容について教えてください。
看護職を含む保健医療従事者全般の人材育成や教育に関する研究を行っています。このほかに学外での教育実践活動として、大学・専門学校の看護教員、新人看護師を指導する実地指導者、学生指導を行う臨地実習指導者を対象に、指導方法や教育評価に関する研修を行ったり、書籍を執筆したりしています。研究活動と教育実践活動はかけ離れているように見えて、『人を育てる』という点で根底ではつながっています。
看護師は机上で学ぶだけではケアができるようにはなりません。実際の臨床現場で先輩や同僚から教わりながら知識や技術を身につけ、それを実践することでようやく一人前になっていきます。そして多くの看護師は、ある程度仕事ができるようになると新人や後輩を指導する立場になります。学生や新人の指導をすることは、教える側にとっても成長の機会となります。このように育てる・育てられる関係を通して得られる経験が、看護の質にどのように影響するのかについて関心があり、研究成果を現場での効果的な指導に役立てたいと思っています。
Q. 研究を始めたきっかけを教えてください。
看護師として病院勤務していた頃に、先輩からいろいろなことを教わりました。同じように看護の仕事ができるのに、後輩への教え方が上手な人とそうでない人がいることに気づきました。看護教員になってからは、教員の教え方が学生のストレスやパフォーマンスに大きな影響を与えることを実感しました。
看護ができれば看護が教えられると思われがちですが、実は「看護をすること」と「看護を教えること」は同じではありません。効果的な教え方をするためには、教育原理や理論を理解すること、教育手法を身につけることが必要です。教える側ができないことを指摘するのではなく、できるようになるための指導方略を工夫することで、教わる側は学ぶ意欲がわいたり、自信を持てるようになったりします。教えるための理論や手法は、教える側のストレスや負担を減らすことにもつながります。臨床現場であっても学校であっても、効果的な教え方ができる看護職が増えれば、学生や新人看護師がストレスなく知識や技術を身につけることができ、結果的に看護の質の向上につながるのではないかと考えたのが研究のきっかけです。
Q. 研究が『未来にどう生かされてほしいか』を教えてください。
私は、看護は自分自身を成長させることができる職業だと思っています。様々な患者様・ご家族と接し、人生や生活の一部に触れ、共有します。人の生や死に向き合い、時には看護師一個人としては経験できない出来事に遭遇することもあります。その過程で、ほんの少しでも患者様・ご家族の役に立つケアを提供できる看護師が増えたら、患者様・ご家族の生活が明るくあたたかいものになるのではないでしょうか。また、誰かに喜んでもらえるケアができたら、看護師自身も嬉しい気持ちになるのではないでしょうか。こういった看護師の活動を通して、患者様・ご家族、看護師自身も、つまり世の中全体が少しハッピーになるのではないでしょうか。
一方で、疾病や障害を抱える他者の生活を支えるためには、専門的な知識や高度な技術が不可欠です。優しいだけでは患者様の役に立つ看護はできません。本当に患者様の役に立つ看護を提供するためには、学校や臨床現場での教育が大変重要だと考えています。教える側・教えられる側双方にとって、看護の仕事の価値を実感できるような看護教育の実現を期待しています。
高校生へメッセージ
これから進路を決める皆さんにとって、たくさんの職業の中からどんな職業が自分に向いているかを選ぶことは難しいことかもしれません。進学先を決めるときには、その先の就職のことを視野に入れて選んだり、すでに働いている方の話を聞いたり、たくさん情報収集をしてじっくり考えてください。
仕事は報酬を得るためだけのものではなく、自分自身を成長させ、人生を豊かにさせるものでもあります。看護という職業も選択肢の一つに入れていただけると嬉しく思います。
プロフィール
健康科学部 看護学科 嶋﨑 和代 准教授
略歴
1973年生まれ、「ナマハゲ」で有名な秋田県男鹿市出身。総合病院呼吸器外科病棟、血液内科病棟、産婦人科病棟、人工透析センターでの臨床経験を経て、2003年より看護専門学校教員、2011年より看護大学教員となり、現在に至る。
・最終学歴
名古屋大学大学院博士後期課程修了(看護学博士)
・著書(分担執筆)
「看護現場で使える教育学の理論と技法」
「教育と学習の原理」
「看護教育実践シリーズ1教育と学習の原理」
「看護教育実践シリーズ2授業設計と教育評価」
「看護教育実践シリーズ4アクティブラーニングの活用」