看護学科

2021年 8月号

チーム医療の場で
管理栄養士と
連携できる力を養う
「健康と食」関連科目

人々の健康維持や病気・ケガの治療において、食は大きな役割を果たします。
本学の看護学科では、同じ学部の中に管理栄養士を養成する「健康栄養学科」があることの利点を生かし、2つの学科で連携した授業を行っています。食の重要性を理解し、チーム医療の現場で適切に管理栄養士と協力し合える力を養うために、看護学科の学生たちは「健康と食」に関連するさまざまな授業を受けていきます。
今回は、その中でも「口腔健康管理学」と「栄養指導論」の2つの授業を見学してきました。それぞれの授業で何を学び、どのような力を身につけることができるのか、紹介します!

1年前期「口腔健康管理学」

口腔機能が全身に与える影響を理解する

口腔機能には、食べ物を噛み砕くこと・飲み込むこと、味を感じること、唾液を出すこと、声を出すことなどがあります。これらの機能が損なわれると、全身に悪影響を及ぼすことがわかってきました。例えば、加齢や疾病などの影響で噛む力・飲み込む力が低下すると、食事の栄養バランスが偏りがちになり、代謝や免疫が低下して、病気にかかりやすくなったり病気が治りにくくなったりします。「口腔健康管理学」の授業では、口腔の構造と機能といった基礎的なことから、口腔機能を損なわせる疾患、口腔機能低下による体への影響などを学んでいます。

肺炎と口腔ケア

この日の授業では、口腔疾患と全身との関連として、特に口腔疾患と肺炎に関しての講義がありました。
日本では肺炎は死因の第4位であり、特に高齢者にとっては生死に関わる病気です。高齢者の肺炎のうちの約7割を占める「誤嚥性肺炎」は、食べ物を飲み込む際に誤って肺に入ってしまうことで引き起こされます。自分で歯や入れ歯を磨けなかったり、抗菌作用のある唾液の分泌量が減っていたりする高齢者は、口の中を清潔に保ちにくく、口腔内の細菌が増えます。そのため、嚥下する力(飲み込む力)が衰えてくる高齢者では、誤嚥により肺にたくさんの細菌が入り込んでしまい、肺炎にかかりやすいのです。
高齢者に対して専門的な口腔ケアを行い、口腔内の細菌を減らすことで、肺炎発症率や肺炎による死亡数が減少することがわかっています。肺炎以外にも、様々な外科手術の前後で口腔ケアを実施することで、術後の感染症リスクを下げ、入院日数を減らし患者さんが早く社会復帰できることもわかってきました。つまり、口腔ケアを行うことで医療費削減に貢献できることになります。看護師として実際に働く際に、口腔ケアの重要性を理解し、口腔内の異常はないかという視点を持って患者さんに対応することが大切なのです。

口腔機能の維持に必要なケアを学ぶ

今後の授業では、最新の研究事例を挙げながら、咀嚼による認知症予防やストレスの抑制、肥満や糖尿病予防について学修します。また、口腔機能を保つための口腔ケアの手法や、嚥下機能(飲み込む力)の訓練法を学び、臨床実習につながる基礎知識を習得します。授業の初めには小テストがあり、国家試験に出やすい部分を中心に知識をしっかり身につけていきます。
※写真は小テストのようす。学生たちは真剣です!

この授業を担当している先生

久保金弥先生

健康科学部 学部長
久保金弥先生

咀嚼(噛むこと)と脳、特に認知症、肥満、ストレスとの関連を研究しています。歯科医師としてクリニックや歯科医院、総合病院に勤務した経験があり、医療機関の勤務経験をもとに疾患の症状や成り立ちについての話をします。

 

3年前期「栄養指導論」

看護学科で栄養教育を学ぶということ

患者さんの中には治療のために食事の見直しが必要な方がいます。大きな病院など、管理栄養士を擁する施設ではそういった患者さんへの栄養教育は管理栄養士が担いますが、小さなクリニックなどでは看護師が栄養教育を行うことも。その際に患者さんの思いや生活に寄り添った栄養教育を行えるスキルは看護師として働く際の強みにもなります。
「栄養指導論」の授業を担当するのは、実際に管理栄養士として病院等で栄養教育の経験を積んだ、同じ健康科学部にある健康栄養学科の教員です。授業では、患者さんの病態にとって望ましい食事・栄養は何か、また、いつ・どのように食べるのが望ましいのかなど、病気の治療に適した食物選択の基礎を学びます。そして、カウンセリングの技法を用いて、患者さんの食行動の変容をサポートするスキルを身につけます。

シナリオ作成・ロールプレイで実践力をつける

今回見学した授業では、糖尿病患者のための栄養教育がテーマとなっていました。糖尿病の場合、血糖値の上昇・下降の幅をなるべく小さくし、血管に負担をかけないことが大切です。そのために6つの食品グループをバランスよく、3食に分けて摂取してもらう必要があります。
まずは栄養教育の基礎となる知識をつけるための講義を受け、その後2~3名のグループに分かれて、ある患者さんへ指導するためのシナリオを検討しました。その患者さんがとった食事のデータを見ながら、もともとの生活スタイルを加味し、適切な食事をとれるよう実現可能な方法を提案します。食事のデータのどこがポイントなのか、伝え方はどうすればいいかなど、先生にアドバイスを受けながらシナリオを完成させます。シナリオができたらグループ内で看護師役・患者役に分かれてのロールプレイです。ロールプレイを通して、患者さんへの伝わり方、話しているときについ出てしまう癖など、気づいた点を共有しました。
患者さんに最も近く、少しの変化にも気付けるのが看護師です。患者さんのようすを見て、自分で栄養指導をしたり、適切に管理栄養士につないだりできる力をつけていきます。

この授業を担当している先生

近藤志保先生

健康科学部 健康栄養学科
近藤志保先生

病院及びクリニックにて管理栄養士として栄養教育業務に従事した経験を活かし、個人の性格、遺伝的体質、ライフスタイルに応じた栄養教育をめざしています。