学部学科トピックス

2023.09.22
短大 保育学科

【研究者紹介】「育児期における母親の友人関係が母親の精神的健康に及ぼす影響について」 大嶽 さと子 教授

本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は大嶽 さと子 教授です。

 

短期大学部 保育学科 大嶽 さと子 教授

専門分野
社会心理学、発達心理学

◆研究テーマ
育児期における母親の友人関係が母親の精神的健康に及ぼす影響について




【動画】

Q 研究内容について教えてください

 子育てをきっかけとして、母親同士が「ママ友」と称される友人関係を形成することがあります。「ママ友」関係は、お互いに悩みを共有したり相談したりすることで育児不安が解消されると考えられています。一方で、一般的な友人関係でも友人の存在がサポート源にもストレッサーにもなりうると指摘されていることから、「ママ友」関係も同様の性質をもつことが考えられます。現に、ネット上では「ママ友」関係の難しさやトラブルに関する記事が数多く散見されており、ポジティブな側面だけではないようです。それらのことから、子育て中の母親が「ママ友」とどのように関わり、母親の精神的健康にどのような影響を与えているのかについて興味をもち、研究しています。 またここ数年のコロナ禍において、人と人との付き合い方が変わったとされましたが、「ママ友」関係はどうでしょうか。現在は特に、コロナ禍において「ママ友」はどのように助け合っていたのか、また「ママ友」の関係性は本当に変化したのかについて明らかにしたいと思っています。

 

Q その研究を始めたきっかけを教えてください

 対人関係の心理学を研究することの面白さは、日々の人間関係の中で何となく感じることをテーマにし、検証方法を考えて現象を解明することにあると思っています。そこで大学院時代は、青年期女子が比較的固定的な同性友人グループを形成し、教室移動や昼食など、学校生活を一緒に過ごそうとする行動について研究し、博士号を取得しました。 ご縁があって本学に勤務し始めた当初は、女子大であることから、青年期女子の友人関係の研究を引き続き深めようと思っていました。しかし、私自身も子育てをするなかで、母親同士も青年期女子と同様に「仲良しグループ」を形成していることが面白いと感じており、またテレビやインターネットでも徐々に「ママ友」という言葉がごく自然に使われるようになっていきました。「ママ友」は子どもを媒介として形成されており、一般的に学校生活などで出会う友人関係よりも複雑かも…と考え、この関係性を解明したくなったことがきっかけです。やはり、日々の人間関係の中で何となく感じることの中に、研究のエッセンスがあったのです。

 

Q その研究が『未来にどう生かされてほしいか』教えてください

 インターネットで「ママ友」を検索すると、「いらない」「面倒くさい」「トラブル」などと、比較的ネガティブな言葉が上位に出てきます。世間では、「ママ友」関係のポジティブな面よりも、どちらかというとネチネチとしたネガティブな関係に興味関心が向けられているのかもしれません。しかしながらそれ以上に、子育てで分からないことを教え合ったり、子どもの預かり先がなくて困っている時に預かってもらったりと、助け合い支え合うことも多いと思っています。少子化や核家族化が進んだ現代に生まれ大人になった人が、子どもと関わる経験のないまま親になり、子育てをする時代です。自身の親が近くにいていつも助けてくれるとも限りません。父親も母親も子育てに不安があって当然ではないでしょうか。そういったなかで「ママ友」と出会い、お互いに支えあうことで、より穏やかな気持ちで子育てに向き合えるようになると思います。子育て中の親が穏やかに子どもと関わることで、未来を担う子どもの伸びやかな育ちが保障されるのではないでしょうか。そんな世の中になってほしいと思っています。

 

◆高校生へメッセージをお願いします

 保育者は、未来を担う子どもたちを支える重要な職業です。また、子どもだけでなく子どもを育てる保護者の方々を支えることも求められています。責任が重そうだし、大丈夫かなぁ…と思う人もいることでしょう。でも、まずは一歩を踏み出して、めざしてみてはいかがでしょう。保育学科の教員全員で、みなさんをサポートしていきますよ。そして、保育学科で気の合う友人を見つけ、素敵な保育者になりましょう!

 

プロフィール
短期大学部 保育学科 大嶽 さと子 教授
 名古屋市で生まれる。名古屋市立大学卒業後、いったん社会に出るが、心理学に興味をもち名古屋大学教育学部に三年次編入をする。卒業後は名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻に進み、博士前期課程修了、博士後期課程単位取得満期退学。学位は博士(心理学)。2011年浜松医科大学子どものこころの発達研究センター特任助教、2013年より名古屋女子大学短期大学部保育学科に講師として着任。准教授を経て、2023年より現職。

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