学部学科トピックス
【研究者紹介】「認知症高齢者の行動パターンの分析」 木村 大介 教授
本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は木村 大介教授です。
医療科学部 作業療法学科 木村 大介 教授
◆専門分野
身体障害領域の作業療法と認知症の作業療法
◆研究テーマ
認知症高齢者の行動パターンの分析

【動画】
Q 研究内容について教えてください
著名な機能主義心理学者によれば、ヒトの行動は、ほとんどが決められたパターンで支配されていると述べています。
つまり、ヒトはいつも考えに基づいて行動を決めているわけではないということです。
これは認知症高齢者に当てはまります。認知症高齢者は、個々人ごとでまったく別の行動をするのではなく、それが正常範囲の行動であるのか異常であるのかはさておき、一定の行動特性によって分類できる可能性があります。
最近では人の行動をウェアラブルデバイスを装着することで位置情報などが簡単に収集できます。これら位置情報を解析することで認知症の方の行動をパターンに分類することを研究しています。
Q その研究を始めたきっかけを教えてください
認知症の方は、認知症の症状もあり、私たちの想定を超える行動をとってしまいます。
「何でこんなことをするのだろう」と考えてもなかなか認知症の方の行動は理解できません。
しかし、認知症の方も一定の行動パターンがあるのならば、それを知ることで行動を予測することができます。認知症の方の行動が予測できれば、私たちも怒ることなく、落ち着いて認知症の方の行動に寄り添うことができるようになります。
そのためには、認知症の方の行動がパターンに分類できることを証明し、行動パターンを得示さなければなりません。それがこの研究を始めたきっかけになったと考えています。



Q その研究が社会にどう貢献されているのか、 または人々の生活にどうつながるのかを教えてください
認知症の方と関わるとき、我々は認知症の方に寄り添い向き合おうとします。
これは一見理想的な関わり方ですが、あまり真摯に向き合うと、我々は知らず知らずのうちに「きっと認知症の方も分かってくれるだろう」と期待してしまいます。しかし、認知症の方は認知症の症状により、想定外の行動を繰り返し、その修正がままならない現実があります。
このように認知症の方に関わる側の期待と、現実の行動との間にギャップが生じることは多くあります。これら期待と現実のギャップは、介護する方のストレスの原因となり、介護負担感の増加につながります。
そして、これらストレスが原因となり、あってはならない、認知症者の虐待やネグレクトなどが起こっています。
認知症の方の現実行動の理解を深めることができれば、認知症と介護者のギャップ埋めることに繋がり、認知症の方と介護者の間にあるさまざまな問題を解決する糸口になるのではないかと考えています。
◆高校生へメッセージをお願いします
知識を探求し、新しい発見をする研究活動は、とても刺激的です。
まずは、高校生の皆さまも好奇心を大切にしてください。分からないことを追求し、自分の視野を広げることで、世界がどんどん広がっていきます。
失敗を恐れず、挑戦し続けていけば、それが研究者への第一歩になるでしょう。将来は、研究をすることで自分自身と社会をより良くしていくことができるということを信じて進んでください。
プロフィール
医療科学部 作業療法学科 木村 大介 教授
平成12年に愛知医療学院作業療法学科を卒業し、作業療法士としての道を歩み始める。
平成22年には星城大学健康科学研究科修士課程を修了し、修士(保健学)の学位を取得。
平成27年に金沢大学大学院医学研究科博士後期課程を修了し、博士(保健学)の学位取得。
認知症関連の研究活動において、平成17年、18年、23年には認知症ケア学会で奨励賞「石崎賞」を受賞。
さらに、令和2年には日本作業療法学会で優秀演題賞を受賞し、令和6年には論文奨励賞を受賞する。
研究テーマは認知症予防から発展し、現在は認知症の行動・心理症状(BPSD)の予測に関する研究を進めている。