学部学科トピックス

2025.01.07
理学療法学科

【研究者紹介】「脳卒中患者の左右非対称性改善に向けたヘッドマウントディスプレイを用いた視運動性刺激によるリハビリテーションの開発」 駒形 純也 助教

本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は駒形 純也 助教です。

 

医療科学部 理学療法学科 駒形 純也 助教

専門分野
神経系理学療法

◆研究テーマ
脳卒中患者の左右非対称性改善に向けたヘッドマウントディスプレイを用いた視運動性刺激によるリハビリテーションの開発



【動画】

Q 研究内容について教えてください

脳の血管が詰まったり、出血してしまう脳卒中により、半身に運動麻痺や感覚麻痺が生じます(麻痺側)。
麻痺があると身体が動かしにくいため、麻痺がない半身(非麻痺側)を主に使った生活となります。立ったり、歩いたりするときにも麻痺側に荷重を掛けないようになってしまいます。
脳卒中患者は、左右非対称の姿勢や動きとなり、非麻痺側のみを多く使用するため、麻痺側の筋力低下、身体バランスの低下、過負荷による非麻痺側の関節痛などが生じることがあります。そのため、立位や歩行時に麻痺側に体重を移動し、左右対称に近くすることが重要となってきます。
私は、視覚刺激を用いて姿勢や歩行時の左右非対称性の改善を目標に行っています。
これは、視野全体を一方向に動かすことにより生じる自己運動感覚というものを利用しています。視野全体が動くことにより自分が動いていると錯覚するものです。当初は、大きなスクリーンに投影して行っていましたが、場所の制限や機材が多くなることにより簡便に実施できないため、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用いて視覚刺激を提示し、姿勢や歩行を改善する方法を研究中です。

 

Q その研究を始めたきっかけを教えてください

私は、山梨大学大学院医学工学総合教育部というところで学位を取得しました。
研究室には、医学部の先生だけではなく工学部の先生もおり、医学だけではなく、工学にも触れる機会がありました。リハビリの研究を開始するにあたり、両方の知識を使い研究を行える環境にいたことが大きいです。
これまでリハビリでは触れるなどの体性感覚や傾きなど感知する前庭感覚を用いた治療が多くありましたが、私は視覚情報が自分の位置を把握するために重要であることを学び、視覚を用いてバランス能力や歩行を改善できるのではないかと考えました。工学部の先生にも協力いただき、視覚刺激を提示した治療方法を研究しています。

 

Q その研究が『未来にどう生かされてほしいか』教えてください

まだまだ基礎的な部分の研究であり、社会に貢献できるのはずっと先になります。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を含めたデバイスの小型化なども必要になります。
しかしこの研究が順調に進めば、リハビリを場所を選ばずどこでも実施することが可能となります。もちろん理学療法士による治療や指導は必要ですが、リハビリの時間は限られており、自主的に行う練習が重要です。
HMDを使うことにより、刺激強度を容易に調整でき、場所を選ぶことなく最適なリハビリが可能となります。また、安価であり、電気などを直接体に流すことがないため安全に実施することができます。

 

◆高校生へメッセージをお願いします

理学療法の対象は、病気やスポーツ領域だけではなく、小学校や会社など多種多様です。
そして、工学や栄養などの分野との研究も盛んに進んでいます。スポーツや音楽、ロボットなど、皆さんの趣味や興味が将来のリハビリに活きてきます。

 

プロフィール
医療科学部 理学療法学科 駒形 純也 助教
健康科学大学にて理学療法士免許を取得。
その後、介護施設やクリニックにて理学療法士として勤めながら、山梨大学大学院医学工学総合教育部にて学位を取得する。
現在は脳卒中の研究に加えて、教育やスポーツなどの研究プロジェクトに参加している。